〈第3回〉 植木はどう作る?〜増殖技術 その2〜
雄大な岩手山麓の牧草地にどっしりと立っている「小岩井農場一本桜」(エドヒガンザクラ)。数々のテレビドラマや映画にも出演し、桜の名所となっています | 根が付いている台木に「一本桜」から採取した穂木を切り接ぎした状態 |
接ぎ木苗を1年養生後鉢上げし育成。岩井農場内の売店(緑化樹木センター)にて数量限定で販売。 | 露地でも育成。小岩井農場内で記念植樹用としても使われている。 |
今回は前回に続いて、植木の増殖技術について詳しく説明します。
種まき(実生)
種(たね)を播いて苗木を作る方法で、大量に増やす場合に用いられます。実生(みしょう)とも言いますが、自然界では普通に行われている増殖手段です。
ただし、植物の種類によって、果実、種子の形状、発芽の仕組みなどが異なります。例えば、果肉に包まれている種子の場合は、果肉を取り除く必要があります。果肉に発芽抑制物質が含まれているためで、自然界においては、野鳥などに食べられることで発芽しやすくなるのです。また、種子は有性生殖で生まれたものなので、雑種になる場合が多く、親木の性質をそのまま引き継ぐことが少ないのです。自然界において、多様性が保たれる理由の一つでもあるのですが、親木とは異なる新しい形質が、突然変異として現れる可能性もあるため、園芸的な選抜育種にも利用されます。
挿し木
枝を切り、用土に挿して発根させることにより新しい個体をつくる方法です。枝を取った元の母樹の形質をそのまま引き継ぎますので、園芸品種を増やすためには簡単な方法の一つです。ただし、樹種により、発根の難易に差があります。発根しにくい樹種の場合は、湿度や温度を管理することにより、発根しやすくなります。また、発根を促進するホルモン剤などを使用することも効果があります。
接ぎ木
「接ぎ木」には、「切り接ぎ」「呼び接ぎ」「芽接ぎ」などがありますが、基本的には、根が付いている台木(だいぎ)に増やしたい親木の枝を穂木(ほぎ)として接ぐ方法です。例えば「切り接ぎ」の場合には、台木に切れ込みを入れ、切り取った穂木を差し込み、固定します。ポイントは、枝を切る場合に鋭利なナイフを使用すること。穂木は接ぎ木用テープなどでしっかり固定すること。接いだ苗木は穂木の葉が動き出すまで乾燥を防ぐこと。
組織培養
植物の芽の先端にある生長点などを取り出し、培養液(培地)で増殖する方法です。培養には光、水、温度、栄養などが欠かせませんが、カビや雑菌が混入しないような設備も必要になります。組織培養は、少量の組織細胞から大量に増殖できる利点がありますが、設備の問題などにより、絶滅が危惧されている植物など特別な場合に用いられています。
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以上の増殖技術からつくられた苗木は、1〜数年養生された後、コンテナや露地(ろじ)に植えることになります。例えば、写真のような「小岩井農場一本桜」の苗木は、親木の形質を継承するために接ぎ木をし、コンテナ栽培や露地栽培をして、りっぱな苗木に育てています。
小岩井農牧(株)〈岩手県〉 足澤 匡
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