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〈第8回〉 生物多様性に配慮したみどりづくり

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植生アドバイザー育成講座の植生調査の様子。例年8月末〜9月初旬ごろ開催。申し込み締め切りは8月20日、運営主体は、(一社)日本植木協会および東京農業大学 総合研究所 みどりの環境創造研究部会

 
   私たちの身近にある公園や街路などでは、生産者が育てた植木が使われ、緑化されています。このような人間の暮らしに近いみどりの場合、植えられる樹種は、都市景観や文化的歴史的背景を考慮して決められます。一方で、2010年10月、名古屋で生物多様性条約締約国会議(COP10)が開催されて、生物多様性の保全に関心が集まったこともあり、里山や自然公園などの自然度の高い地域では、環境や生物多様性に配慮したみどりづくりが求められるようになりました。
 この自然環境に調和した緑化を実現するには、その地域の自然環境を表す「植生」を調べることが必要です。
 
 植生とは、ひとつひとつの植物をバラバラなものではなく、集団として捉えたものです。森を観察すると、高木、低木、草と階層構造になっていて、場所が変わると構成するそれぞれの種類も変わってくるのが分かるでしょう。その場所に、その組み合わせで木があるのは、どうしてでしょうか? 植林された人工林でない自然林の場合は、決してデタラメに生えたわけではありません。その木がその場所に生えているのには、理由があるのです。
 植物は、通常タネでその生育場所を広げていきます。しかし、タネが届く範囲イコールある樹種の分布している範囲、というわけではなく、温度や水分条件、地質や日当たりなどの環境条件が合った場合のみ、発芽し順調に生育して大きくなります。つまり、その場所に適した(あるいは順応できる)種類が生き残っていることから、どんな植物があるかを調べると、その場所の環境条件が分かるのです。これを植生調査といいます。
 実際には一定面積の調査区を何カ所かとり、そこにある高木、低木、草など、すべての植物をリストアップして植物群のタイプを調べます。その調査結果をもとに植栽する樹種と組み合わせを決めることで、自然環境に調和した緑化ができるのです。選んだ樹種は、その場所の環境条件に合っている樹種なので、ローメンテナンスなみどりになります。宮脇昭氏が提唱する、潜在自然植生にならった樹種のコンテナ樹木で緑化する手法もそのひとつです。ダム周辺や大きな切土(きりど)法面(のりめん)のように、植生を大規模に復元する必要がある現場や、海岸地の砂防植栽、スキー場跡地などの植生復元などで、この自然環境に調和した緑化が広がることが期待されています。
 そのためには植生を調査し、適切な植生復元計画を立案できる技術者が必要ですが、その技術者を育成する「植生アドバイザー育成講座」を、私たち?日本植木協会は、毎年開講しています。今年度も8月29日?9月1日に、群馬県の川場村で実施します。基礎から応用までの植生を学び、実際に野外で植生調査をして、その調査結果をもとに植生復元のための植栽計画をプランニングする実践的なプログラムです。
 これからは人に近い都市空間と、自然に近い空間の緑化、それぞれの地域に合った緑化が大切になるでしょう。自然に近い空間では、人間の思い込みにとらわれず、調査できちんと自然の声を聞き、緑化したいですね。

覺殀種苗園(長野県) 上条祐一郎


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