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〈第10回〉 誘鳥木、誘蝶木、誘虫木

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シマトネリコ(実)
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カブトムシが今年かじった跡
 
  昔から「梅に鶯、松に鶴」などと言って日本人は、植木と鳥の取り合わせの妙を楽しんで来ました。実際は、グイスでなくてメジロが来ますが、それは理想の情景を詠った言葉、科学ではなく文化なのです。
 このように、庭に木を植えて鳥や蝶を呼び寄せ、一緒に楽しんでしまう植木を「誘鳥木(ゆうちょうぼく)」「誘蝶木(ゆうちょうぼく)」と呼んでいます。代表的な誘鳥木のツバキやウメには、メジロなどが蜜を吸いに来ます。ウグイスカグラやジューンベリーには、甘い実を求めてちょっとうるさいヒヨドリがやって来ます。秋に赤い実のなるソヨゴ、クロガネモチ、ピラカンサ、黒い実のネズミモチなども誘鳥木です。
 誘蝶木では、例えばブットレア。英名でバタフライブッシュ、夏咲く花に蝶が来ます。それから、アゲハチョウが食べるミカン科のカラタチやサンショウなどもそうです。
 さて、3番目の誘虫木です。あまり聞いたことないですね。実は、私が考えた造語なんです。文字通り虫を誘う木なのですが、何の虫かっていうと、皆さんが夏休みに散々追いかけた定番の「カブトムシ」なんです。
 昆虫採集といえば、カブトムシ、クワガタが男の子の憧れでした。
 朝早くから雑木林に出かけてはクヌギやコナラの周りを探し、根元をほじくったり、はては砂糖水を染み込ませた脱脂綿をクヌギに仕込んだりして、そこまで努力してもなかなか思うようには捕れないものです。
 最近は、郊外に出ても雑木林が少なくなりました。田舎に行っても放置された林が多くなり、適度に人の手の入ったカブト、クワガタの好む環境の林が失われつつあります。
 そんな中、ここ東京の多摩地区に、一度に20匹から30、40匹もカブトムシが捕れてしまう、子供たちにとって夢のような木があるんです。
 それは、この連載の第一回で紹介した「シマトネリコ」です。このことは、植木屋仲間では常識となりつつありますが、一般にはまだほとんど知られていない現象です。
 7月中旬、羽化後のカブトムシがこの木に集まって樹皮をかじっていました。中には交尾しているペアもありました。しかし、それもほんの2週間程度の限られた期間で、8月に入ると、幹には傷跡だけが残っていました。
 なぜこんな事が起こるのか、はっきりしたことは解りません。外国産のトネリコでも同様の経験がありますが、同じトネリコ属のアオダモにはみかけません。きっとシマトネリコには、カブトムシを魅了する何かがあるのかもしれません。
 この事実を知ってしまった良い子のみなさんへ、社団法人日本植木協会からのお願いです。来年の夏には植木畑にカブト捕りに行くぞーと思っても、勝手には畑に入ってはいけませんよ。植木屋さんが大切に育てている商品ですから。
 そこで日本植木協会は、「日本列島植木植物園」という取り組みを行っています。それぞれの畑を一般の方にも公開しましょうということで、協会のサイトに各地の生産者の連絡先を載せていますので事前にご連絡ください。
 これを機会に、少しでも「植木」のことに興味を持っていただけたら幸いです。

蠑金井園(東京都) 吉澤信行


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